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  • 執筆者の写真fullhands2016

メインとサブ

という概念について真剣に考えてみたのです。発端は旧知の人物からのロッドリメイクの依頼です。「お任せで!」というざっくりとした打ち合わせの後に、2本の竿が送られてきました。1本には「メイン」もう一本には「サブ」と殴り書かれた養生テープが貼ってあります。これはどう考えるのが正解なのだろうか?メインはちゃんとやって欲しいけど、サブは適当な感じで、という意味ではないはず…。ひょっとすると「メイン機」に求める性能と「サブ機」に求められる性能をよくよく考えて、それぞれを的確にモディファイしなさいという試験なのではないだろうか?そういう事なら受けて立とうではないか!

メインロッドについて。メインという考えはあくまでもサブに対しての概念であるので、メイン用の仕様というよりも、「使いやすさ」という事だけを考えます。それには①バランス(持ち重りしない)②トラブルレス(ガイドへの糸絡み)この2つが大きな要素だと考えます。

軽快に仕上げるためには軽いガイドを使い、最小のスレッド量とエポキシ量で仕上げる事、適切なリールシートの位置と、グリップパートの重量と重心です。持ち重りを解消する為にグリップエンドにバランサーを入れるやり方もありますが、僕はあまり好きではありません。単に竿を保持しているだけならそれで良いのですが、ロッドティップを細かく震えさせるようなアクションを与えるのにはカウンターウェイトはマイナスであると感じるからです。少々手間はかかりますが、グリップパート全体に重量が分散されるように作ります。

ガイドへの糸絡みに関してはガイドの数と形状である程度解消されます。当然ガイドの数が多ければ糸絡みは少なくなりますが、あまり多いと竿の感じが変わってしまいます。ここらへんはお好みもあるでしょうから、僕の独断と経験で決めてしまいます(笑)

ガイドは日進月歩で何が一番だと判断するのも非常に難しいと思います。今回のリメイクのメインロッドには新登場の「LRV」シリーズを使ってみました。その一番の魅力はクラス最軽量という本体とフットの短さです。ガイドフットが短いということは固定するスレッドもエポキシも少量で済みます。さらなる軽量化につながります。全長も短いので竿の曲がりも阻害しにくいという文言にも説得力があります。逆付専用であるのでティップ側に膨らんで回り込んだラインが絡まる事なく滑り戻るという…。

余談ですが、竿を作る際、使い手を知っていると非常に作りやすいです。今回のご依頼主とは付き合いが古く、ご本人の釣りを隣でよく観察する機会があります。非常に繊細なロッドワークで「ネッチリ」と魚を誘います。どんなに釣れない時でも諦める事なく、試合終了までやりきる姿は釣り人というよりも「修行僧」や「勝負師」という感じです。そんなわけで、ロッドティップを震わせる回数が人よりも多く、必然的にガイドへの糸絡みが起きる回数も多いはずです。こういう方のためのロッドなので軽快な操作感とストレスフリーを命題にしたモデルをメイン機の回答としました。その為僕は新規作成のご注文やリメイクに関しては、打ち合わせに一番時間を使うようにしています。脱線m(_ _)m

対してサブ。これはメイン機に何か遭った時の備えです。これをメインと同じ仕様にしては、「同じ竿が2本」という事になってしまいます。それでは、メインとサブというご注文の答えにはなっていません。それぞれの役割を考えると、特化した性能を持つメインに対して、その逆が正解なのではないかと。レース用バイクに例えるならば(レース好きのご依頼主なので、笑)メイン機はギリギリ限界の攻めのセッティングに対して、サブ機はスピードに関してのパフォーマンスは望まず、誰が乗っても乗りやすく、マシン自体があらゆる面で耐久性に秀でているべきだと考えました。という訳で、サブのガイドは強度のあるステンレスのKWガイド一択、スレッドもエポキシも通常量です。長々と書きましたが、出来上がったこの2本がこちら

メインロッドはコルクグリップ&ライムグリーンにゴールドの差し色で華やかに。サブロッドはブラック&ホワイトのシンプルな格好良さを。コンセプトは現代に蘇ったFujiスピードスティック。モデル名を付けるとすれば「Hi-Speed Stick #6-167HOBB」といったところでしょうか。

バットはどちらもKW(メインはチタン、サブはステンレス)。JANGLEMANという名前にしました。末尾のアルファベットはそれぞれのモデルの特徴を表しています。BW(ブルワーカー:牛のように働く)とFW(フェザーウェイト:羽毛のように軽い)。ネーミングは性能には関係ないけれど、愛着という一点においてはとっても大切な要素だと考えています。

LRVガイド(左)フットの幅だけのスレッドと薄めのエポキシコート仕上げ。KW(右)

仕事が遅々として進まないのは、こんな事ばかり考えながらやってるからなのでしょう…

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