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​せっかくなんで竿についていろいろ書いて行こうかと思うのです。僕の現在知っている事だけではなく、僕自身がこれから学ぶ事も皆様にお裾分けできたらと。仕事の合間にボチボチと更新していきますので気長にお付き合い下さい。では早速。
ルアー用の竿を作る人を何と呼びますか?和竿であれば「釣竿職人」で良いかもしれません。山へ入って竹を選別するところからやるような方ならば、自己完結型で無頼な感じが「職人」という称号にぴったりだと思います。対して、ルアーロッドを作る人は「ロッドビルダー」と呼ばれます。僕自身、竿を「ビルド」するという表現はぴったりだと感じています。仕事の分担、流れが建物を建てるのに似ているなあと。設計する人、材料を作る人、現場で作業する人、この三者が働いて出来上がります。
ルアーロッドの構成パーツを大きく分けると、ブランク、ガイド、リールシート、グリップ素材、ガイドスレッド、となります。細かいところでは、ドレスアップパーツ類や、スレッドを固めるエポキシ樹脂、スペーサー、アーバー類などもありますね。実は、これらの部材は別々の会社で製造されています。餅は餅屋というやつですね。その中でも釣竿の根幹であるのがブランクと呼ばれるものです。
 
ブランクとはカーボンやグラスで作られた弾力性のある棒で、このブランクの性格が竿そのもの用途を決めており、核心部分でもあります。「A社の竿はB社のブランク使ってるからすぐ折れるよね」なんて会話を耳にする事がありませんか?実は、ブランクを製造しているメーカーは意外と少なく、小さなメーカーは、ブランク製造ができるメーカーに依頼している事が多いのです。先の会話はそういった事情を知っている方なのでしょう。しかし、ちょっと待って下さい。会社によって製品の違いはあると思いますが、何故違いが出るのか、もう少し踏み込んで考えてみると面白いと思います。一般的なブランクの作り方を簡単に説明しますね。釣竿に使われるカーボンはシート状になっています。これをマンドレルと呼ばれる芯金にクルクルと巻きます。巻いた後はシートを密着させるために、テープでグルグル巻きにして窯入れします。ちなみに約120度まで温度が上がるそうです。焼きあがったらマンドレルを抜いてテープを外します。アンサンド(unsanding=磨いてない)ブランクと呼ばれるものの表面に細かい凹凸があるのはテープで締めた跡なのです。僕は見た目が格好良いから模様を付けているのだと思っていました(^_^;)。また見た目がツルツルしている竿は表面を磨いて塗装してあります。処理が違うだけで、製法は変わりません。そしてどんな性格のブランクを作るのかは設計士が決めています。
設計士の仕事と言っても、どこまで担当するのか、各社で若干の違いはあると思いますので、僕の知っている設計士さんの場合で話を進めて行きます。ブランクを作るにあたっては、素材であるカーボンを選びます。どこの会社のどんなシートを使うのか。どういうパターンで何回巻くのか。テープピッチはいくつなのか。マンドレルの設計、選択。これら全てが設計士の仕事です。意外な事ですが、カーボンシートは生モノで、冷蔵庫で保管しなければなりません。ちょっと話が逸れますが、みなさんならば、竿のコストダウンを考えた時にどうしますか?見た目でお客さんに分からないようにするならば、カーボンシートの保管を常温の倉庫にしたり、テープのピッチを広くして毎回使うテープの長さを節約してみたり、こういうランニングコストを抑えるのはかなり大きい事だと思います。しかし、それをやってしまうと、製品のバラつきや不良品の原因になるかもしれません。逆に言うと、そこを徹底している製造メーカーの製品を使いたいですね。さてさて、設計士の仕事はまだまだ続きます。出来上がったブランクをどんなふうに組み立てるのか、グリップの長さや、リールシート、ガイドの選定、ガイドを固定する糸巻きの幅。(ガイドは、スレッドと呼ばれる糸で固定し、樹脂で固めています)実際に作業をしている訳ではありませんが、竿は設計士が「創る」ものなのです。つまり同じ工場で作ったとしても、それが「名竿」となるか「駄竿」となるかは設計次第なのです。いわゆる「ブランク云々」という会話で「最近C社の竿が良くなったと思わない?ひょっとすると、A社の設計士がC社に引き抜かれたんじゃないかな」とか言う方がいたら、ソムリエと言っても過言ではありません。
40トンカーボン使用、などという言葉を聞いた(見た)事ありますか?竿に使われるカーボンの性質を表示するもので、数値が大きくなると硬くなります。そのカーボンを変形させるに必要な力で表示するので、数字が大きくなるほど硬くなっているわけです。鉛筆の芯の柔らかさ(濃さ)の表示でHとか4Bとかありますね。Hが40トンカーボン、4Bが16トンカーボンという感じです。では硬い竿は全て高弾性(40~30)が使われているのかというと、実は逆である事が多いように思います。硬い竿を作るにはカーボンシートのプライ数(巻き)を増やして肉厚なものにしなければなりません。同じ硬さに仕上げようと思えば高弾性カーボンを使った方が軽く仕上がります。ではなぜそうしないのでしょうか?答えは簡単、折れやすくなるからです。先程鉛筆の芯に例えましたが、Hは4Bよりも折れやすいですよね。曲げるのに同じ力が必要であるとしても、限界を超えたときに折れるか、耐えるかの違いです。このため大きな負荷がかかる釣りには低弾性のカーボンが好まれます。低弾性の竿の特徴としては「でろん」とした感じです。もちろん設計によって低弾性の竿でも高弾性のように感じるような場合があります。竿を触ってその竿に何トンのカーボンが使われているのが分かる方は専門職の中でもごく一部だと思われます。ちなみに僕は分からないと思います(笑)
今後のテーマ「硬さと強さ」「良い竿とは」「ロッドビルダーの仕事」「調子」などなどです。
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